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2023-06

映画「新聞記者」

shinbunkisha.jpg「新聞記者」,封切り2日目に鑑賞しました.主演の松坂桃李の「最初に脚本を読んだとき,『こんなに攻めた映画を作るのか』と衝撃を受けた」[1]という言葉を読んでいたので,見る前から期待の閾値は上がっていましたが,そのつり上がった期待にも十分応える,今の日本の権力のコアに迫るものでした.
劇場情報はこちら

監督は弱冠32歳,「新聞を読まない」世代だそうです.監督の言葉やインタビュー記事から少し引用.
日刊ゲンダイから

監督は32歳。新聞をまったく読まない世代で、政治にも関心がなかった。それで、「民主主義国家で生きている以上、政治とは無縁ではいられない。一人一人の生身の生活と政治は切り離せない。政治から遠ざかれば、民主主義からも遠ざかる」というような話をしたんです。「上から目線ではなく、若者の視点から映画を撮ったら面白いとは思わないか。やってみないか」と。
すると、監督は俄然ヤル気を出して、東京新聞の購読を始めて、モーレツに政治の勉強を始めた。国民が何も知らなければ、権力によって意のままに分断されてしまう。そこに「政治に無関心」の怖さがある。そうしたことが政治による同調圧力に屈してしまう下地になっていることを監督は悟ったんです。うれしかったですね。


週刊金曜日6/28日号の藤井道人監督(32歳)のインタビュー記事から
撮影前、記者や外務省の官僚などさまざまな立場の人に会った。そこで感じたのは「自分があまりにも何も知らなかったことへの恐怖」だという。「自分たちが知ろうとしなかったことや、取捨選択できる時代なのに、僕たちが(その意味を)問わなかった情報がこれほどあったということにぞっとしました。自分がそれまでななめ読みしかしてこなかったニュースや情報の信憑性を考えるようになったんです」


日本の権力のコア
とは,警察の情報力を動員して権力と金力でネットとメディアを操り支配するメカニズム,安倍政権によって異常に肥大化した,今日の国家支配の手法の最核心部分.まさにこれを暴いていると思われます.

国家支配に官僚組織や会社組織の上下関係を使うだけでなく,公安を中心とした警察秘密部隊の情報を,権力に都合の悪い人間を排除するのに使う,あるいは,反抗する者への脅しに使うという手法です.過去の典型的な例は,原発問題で政府の言いなりにならなかった福島県の佐藤栄佐久知事への「汚職攻撃」でしょう.(これには共産党の赤旗でさえ「推定無罪」の原則から外れるどころか,謀略に乗った報道だったと思います[2].その総括も今日まで聞いていません.)

今でもこの脅しのメソッドは様々に効いていて,野党の追及がなぜか「寸止め」になっていたり,権力が最も嫌がりそうなところを避けていたりすることの原因になっているのかも知れません.誰しも自分の人生で何十年も遡ってアラ探しをされれば,どんな「ホコリ」も出ないという人はほとんどいないでしょう.それを「週刊誌に暴く」「ネットで拡散させる」と脅されれば,口をつぐむ人がほとんどでしょう.ましてや,ガセネタでさえもある期間は「本当」にできるのです(まさに上の佐藤栄佐久知事のケースのように).

ぜひ多くの人に見て欲しい映画です.難点としては,新聞社のオフィスのシーンでカメラが意味なくぶれること.望遠で撮ったそうですが,意味が分からず,ただ見る人の目を疲れさせるだけです.本では「改定版」がありますが,映画ではそれができない(?)のが残念です.はじめの方でこれさえ我慢できれば,あとは映像的にも秀作です.

[1] 松坂桃李「問題作でも、全裸でも、僕はひるまない」,婦人公論,2019年06月28日
https://fujinkoron.jp/articles/-/533
[2] 主張 福島前知事逮捕 「税金を食い物」の腐敗断て,しんぶん赤旗,2006年10月25日
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-10-25/2006102502_01_0.html

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