2017-06

左派・リベラル勢力は「烏合の衆」であり続けるのか?

そうとうに偉そうな,それこそ「上から目線」的なタイトルを付けてしまったが,今国会がこの国にもたらした,そしてこれからもたらすであろう災厄の重大さ,広汎さに愕然とするばかりで,とても冷静ではいられない.それでつい筆が,いやキーが滑ってしまった.

東京新聞は,「司法 違憲判断も」と題して,今回の閣議決定について「まっとうな裁判官なら違憲判断もありうる」という憲法学者のコメントを紹介している[1].これは実際に起こりうる話だろう.なぜなら最高裁には,安倍晋三によって内閣法制局長官をクビにされた山本庸幸氏が最高裁判事に就いており,その就任会見で「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい」と発言しているからだ[2].しかし東京新聞の記事では,今回の閣議決定にもとづく関係法令が成立後は違憲訴訟を起こせる,つまりその前は起こせないとの専門家の意見を書いている.「法廷に持ち込むのは,閣議決定や関連法を整備した段階では難しく,武力行使に踏み切る段階だろう」というのだ.

しかしこの意見には全く合点が行かない.「武力行使に踏み切る段階」などと言うのではもはや手遅れで,その時点というのは実際に多くの人の命が失われることになる寸前である.裁判の日程調整などをしているうちに開戦,となったのでは何の意味もない.実際に武力行使つまり戦争が始まる前であっても,関連法が成立してしまうような時点では「手遅れ」の可能性が高い.時事ドットコムに作家・半藤一利氏のインタビュー記事[3]が載っているが,具体的な法改正までいけば「ノー・リターン・ポイント」を通過することになるだろうと述べている.つまり,そのような時点では社会の雰囲気など状況が一変しており,今でさえ稀にしか機能しない「司法の独立」はますます麻痺がひどくなっているだろう.あるいは,判決が出る頃には明文改憲そのものが追いついてしまっているかも知れない.そうすればもはや「違憲」ではなくなっている.いずれにしても「後の祭り」では司法が機能したとは言えない.「実害が出ないと法廷に持ち込めない」というこれまでの法律家の思い込みは改めて欲しいものだ.

半藤一利氏はこのインタビューの中で,「私たちは(安倍とその回りの「知恵者」に対して)油断しすぎたのかもしれない」と述べているが,全くそのとおりだと思う.秘密法,大学自治を破壊する教授会無力化法(学校教育法,国立大学法人法改正),教育委員会制度の改悪など,この国の民主勢力は大変な失点の連続である.そして今回の「集団的自衛権」=「人のけんかを買って出る権利」(半藤氏による)容認の閣議決定である.

安倍は前回首相の座についた時も(第一次安倍内閣),大変な「業績」を挙げている.憲法と並んで戦後日本民主主義の重要な財産であった教育基本法の改悪,防衛庁の省への昇格など,わが国の民主的制度の破壊と社会の軍事化では,自民党の長年の宿願を達成している.そのような内閣に対しての警戒心と対策が,これに責任を負うべき政治勢力には余りにも欠けていたと言うべきだろう.

1年前の参院選で,衆参の「ねじれ」から両院とも自公が多数を占め,いよいよ翼賛国会が加速することになったが,その直前に書いたブログ[4]で,護憲勢力側の戦略の不在を指摘した.残念ながらその時の懸念が現実化している.おそらく軍需産業もその中で大きな勢力を占めているであろう支配勢力は,用意周到な戦略・戦術を練り上げてことを進めているはずだ.それに対して民主勢力側のリーダーシップは,拙ブログ記事で指摘したように,とにかく頑張ればいい,というレベルでしかないように見える.それではプロの仕事とは言えないだろう.この点を教訓化できるかどうか,それが最大のポイントだと思う.
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[1] 「司法 違憲判断も」 専門家「従来解釈が確立」,東京新聞2014年7月2日 朝刊.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014070202000122.html
[2] 「憲法解釈で首相に“10倍返し” 最高裁判事が見せた男の意地」,日刊ゲンダイ2013年8月23日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/144145/2
[3] 目前に「引き返せぬ地点」−集団自衛権に警鐘 作家・半藤一利氏インタビュー,時事ドットコム,2014年6月26日.閣議決定後,2日の毎日にも半藤氏の「抑止力、戦争の出発点」と題するインタビュー記事がある.
http://www.jiji.com/jc/pol-interview?p=hando_kazutoshi-01
[4] 拙ブログ記事「共産党執行部は敗走を『転進』と呼んだ旧軍部に似る」
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2013-05-10

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