2017-06

国立大学で「ミッションの再定義」なる違法作業が

国立大学ではいま,文科省の指示による「ミッションの再定義」*なる作業が進行しています.例によって,文科省が作ったテンプレートに大学側が答えを当てはめていくという作業が,ほとんど何の疑問も呈されることなく行われています.しかしミッション,つまり使命という言葉から分かるように,これは国立大学の存在意義そのものにかかわる問題です.

このような作業が文科省の指示によって,文科省主導で行われること自体,大学の独立性を損なうものです.それとも,もはや私のこのような言説の方が「時代遅れ」とでも言うのでしょうか?大学の雰囲気はまさにそのようなものです.それではいけないと思い,教授会で少し演説と議論を試みました.以下は,その時の私の発言に少々「校正」を加えたものです.

それは先週,私の所属する教授会でこの問題が審議された時です.審議というより,大学執行部による一方的な説明でした.10月11日に行われた文科省の「説明会」の内容を,事務職員が説明し,研究科長(学部長)が補足するというものでした.

これに対して,私は,このようなプロセス自身が違法ではないかと指摘しました.国立大学法人法には,文部科学省が国立大学にいろいろ指図できるのは,中期目標と法律上明記されている.30条2項の5つの項目である.このように明記されているということは,それ以外の指示は勝手にやってはいけないというように理解するのが当然だ.今回の件は中期目標プロセスでもない.何ら法的根拠もない指示というのは違法性があるのではないか,と述べました.

また,「ミッションの再定義」というのは国立大学の存在意義に関わることであり,文科省が作った下敷きをなぞるようなやり方は無責任でもある,とも指摘しました.すなわち,この種の議論では,アジェンダ・セッティングこそが,つまり重点の置き方こそが最大の問題である.「どこに特色を出すか」と言うことが重点なのか,それとも,国立大学というのはそもそもどのようにあるべきなのか,このどちらを重点的に検討すべきかという問題である.

たとえば,今回の原発事故に際して科学者がどういう役割を果たしたか.何人もの大学教員に対し「御用学者」という批判がなされたが,これをどう受け止めるのか.ユネスコの高等教育世界宣言が求めるような大学教員や教育機関の「批判的な役割」をどれだけ果たしたか,あるいは果たさなかったのか.このような反省も全くないままに,文部科学省のテンプレートをなぞって行くなどと言うのは,全くの責任放棄である.違法性に加えて,国立大学の基本的な機能についての無自覚を示すものでもある,このような趣旨を述べました.

違法性の問題について議長である研究科長に問いただしましたが,明確な答えは返ってきませんでした.先に説明した事務職員が,学長の「文部科学省が主導でこういうことをやっているというのは法律的な根拠が乏しいのではないか.ミッション再確認という用語が正しいのではないか」という言葉を紹介しました.

1人の教授から,「この問題で文部科学省を対立軸としてとらえるべきではない.国家戦略会議や財務省からのプレッシャーをかけている.むしろ文科省とスクラムを組んで一緒にやった方がいいのではないか」という趣旨の発言がありました.

そこで,私は次のように反論しました.「何十年もまえからそう言われている.本当の『敵』は財務省だ,大蔵省だ.文科省はわれわれの味方になってくれていると.しかしまさにこのようなフォークロア(俗説)が蔓延した結果が『法人化』であり,現在の国立大学の状態だ.国家機関である文科省と大学との役割の違いが大きいのか,それとも文科省と財務省との役割の違いの方が大きいのか,その役割の違いや距離の測定を間違えたら全くおかしくなる.国家機関と教育機関の間のほうが距離が大きく,役割も明かに違う.」

教授会でのやりとり(の一部,脚色付き)は以上ですが,この件では,著名大学人の役割と責任は大きいでしょう.いわゆるnoblesse obligeです.他の社会的問題でいくら立派な発言をしていても,自らの大学社会の問題で必要な発言をしない,教授会で沈黙しているとしたら,単なる「タレント」という疑念を持たれるかも知れません.

ちなみに,与えられるテンプレートにただ書き込むだけの作業にほとんど疑問を感じない,あるいは感じても抵抗しないというのは,「マークシート方式」による入試の影響でしょうか?受験者,学生だけでなく,実施者にも悪影響を与えるのでしょうか?

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* 10月11日付けの文科省高等教育局の「資料」によると,「ミッションの再定義」とは,文部科学省において「各大学からデータ等の資料を得て、意見交換を行いながら、各大学の専門分野ごとに、当該専門分野にかかわる教育研究組織の設置目的、全国的又は政策的な観点からの強みや大学として全学的な観点から重視する特色、国立大学として担うべき社会的な役割を把握する」ことだそうです.
配付資料は次に置いています.
http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/redefinition-nat.uni.pdf

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まとめ【国立大学で「ミッショ】

国立大学ではいま,文科省の指示による「ミッションの再定義」*なる作業が進行しています.例によって,文

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