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小説「ジェノサイド」

genocidecov.gif高野和明という作家の長編小説「ジェノサイド」を読んだ.冒険小説にしてSF,現代の「戦争と平和」の問題が深く折り込まれている.読み出したらやめられない,スリリングな筋立てに感心し,また「米帝批判」を見事なエンターテインメントに仕上げた作家の技量に脱帽する.

南アフリカの人種隔離政策批判が,これも見事なエンターテインメント作品「遠い夜明け」という映画で1987年に製作・公開されたが,そのわずか7年後に,この抑圧体制が27年間も獄舎に繋いでいたネルソン・マンデラが大統領に就任した.

アメリカの世界支配体制の徹底的な批判をエンターテインメントにしたこの作品が映画化され,それがこの体制を揺るがせるきっかけになればと思わずにはいられない.

イラク戦争や国名は実名で出るが,アメリカ政府の閣僚は変名にされている.しかし大統領と副大統領の二人は,イニシャルが同じなのは恐らく意図的だろう.
現実               小説
ジョージ・ブッシュ大統領    →バーンズ
リチャード・チェイニー副大統領 →チェンバレン
国防長官は,現実のラムズフェルドが小説ではラティマーという名前.日本語のカタカナでは同じでもアルファベットにするとRとLで違うようだ.また,チェンバレン副大統領(現実のチェイニー)の小説中での運命にご注目を.

以下に引用する一節がこの小説の骨太さを代表している.最後にあるアイゼンハワーの有名な「軍産複合体演説」の全訳は次に置いています.
http://ad9.org/pegasus/kb/EisenhowerAddress.html
(関連記事 http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2009-01-22 )
(398ページから)
 イラク戦争の開戦前から、この企業の株価は上昇を始めていた。バーンズ大統領による勝利宣言の後、イラクでの復興業務が本格化すると、インフラ事業を請け負った会社の株価は創業以来の最高値を更新し続けた。そして今回、巨額の政府保証融資を受けられる見通しがつき、さらに国防総省から総事業費七十億ドルの大型案件を受注したため、前年比八割増の経常利益が見込まれていた。チェンバレンにとっては真に喜ばしいことだった。このエネルギー企業からの政治献金は、大幅に増額されることだろう。
 それにしても、とチェンバレンは考えた。軍産複合体の中枢に身を置いていると、支配の論理があまりに単純なことに驚かされる。恐怖だ。戦争で儲けたい政策決定者は、他国の脅威を誇張して国民に喧伝(けんでん)するだけでよい。判断の根拠を国家機密の壁で隠してしまえば、マスコミもノーチェックでこの脅威論を垂れ流す。ただそれだけで、税金から莫大な資金が国防予算に回され、軍需企業の経営者たちの報酬は跳ね上がる。そして国民に植え付けられた恐怖は国境を越えて伝播(でんば)していき、他国もアメリカに倣って軍事予算を増額する。こうして国と国との緊張は、疑心暗鬼によって現実よりもはるかに増幅され、場合によっては本当に戦争が勃発し、特定の者だけを潤す無尽蔵の金脈が形成される。しかも為政者にとっては、外敵を作ることによって支持率を上昇させられるというおまけまで付く。
 この事態を予見していたアイゼンハワーは、大統領としての最後の演説で軍産複合体の危険性を国民に警告したが、聞き届けられることはなかった。世界各国に、戦争によって利潤を貧る企業が存在している限り、この世から戦争がなくなることはないのだろう。

最後から4ページに出てくる主人公(の一人)の台詞に,作者の「九条」への思いを読み取った.
「もう安心だよ.ここには戦争はないからね.この国の人たちは,もう戦争しないと決めたんだ」

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国内小説「ジェノサイド」高野和明 2011年

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