2017-08

「基地阻止」から「基地閉鎖」への直接行動の拡大を ― “Futenma 365” の提案 ―

    要約
普天間問題が全国民のアジェンダになっているかつてない機会(オポチュニティイー)を生かし,普天間基地撤去を実現するためには,同基地のゲートに連続的かつ長期間に亘って座り込む,非暴力の封鎖行動が必要かつ効果的であると思う.

昨日紹介したチャルマーズ・ジョンソン氏は,次のように発言しています.
「同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。」

鳩山首相を批判し糾弾するのも当然だし,また逆に応援する気持ちも分かりますが,個人個人にとって最も重要なのは鳩山さんがどうのこうのではなく,「自分が」何をするか,ということだと思います.私たちの一人一人,つまり“他の日本人”が何の行動をするのか,どう“立ち上がる”のか,ということです.ジョンソン氏の発言は,この重要なポイントに触れたものだと思います.

先のブログ記事での自治体決議の提案はその一つになりうると思います.ここではもう一つの新しい行動の提案です.現在の,基地移設反対,基地新設反対の運動からさらに攻勢に出て,普天間基地の閉鎖を求める直接行動キャンペーンを行ったらどうでしょうか.もちろんあくまでも非暴力の行動として,です.

沖縄ではこれまで,辺野古の「海上座り込み」や,高江のヘリパッド阻止運動など,果敢な非暴力直接行動で(当事者がこの言い方を好まれるかどうかは別として),基地新設が阻止されて来ました.この運動を「新基地の阻止」から「現基地の撤去」に拡張するのです.

具体的には,普天間基地のすべてのゲートに座り込み,出来るだけ長期間かつ連続的に封鎖するのです.これは,アメリカや米軍に対する強いメッセージとなり,またメディアも取り上げざるを得ない,強力で効果的なキャンペーンになりうると思います.

逮捕者が出ることが予想されますので,その際の支援体制,裁判への備えなど,事前の十分な準備が必要です.また,参加者には事前に,「逮捕のリスクを負う」のか「逮捕回避」かの確認をして,前者は十分な心の準備をしたうえで行動することが重要です.後者の,逮捕のリスクを避け,回りで支援する多数の人々も絶対に必要です.

すぐに警察にゴボウ抜きにされるので,封鎖の実効性はないのではないかと思われるかも知れません.しかしこのような行動を繰り返すことで,基地と米軍に対して大いなるハラスメントを与えられるし,何よりもメディアが取り上げざる得ないため,アジェンダの重心を「移設」から「基地撤去」に持って行くことが出来ます.封鎖の実効性についても,イギリスの核基地封鎖運動では,「ロックオン」など様々な技法を開発し,最長2時間もの封鎖に成功しています.これだけの時間だと,基地の運営に何らかの実害を与えられるはずです.

これまで私が支援し,その行動の一部にも加わったイギリスの反核運動グループ「トライデント・プラウシェアズ」(TP)では,これまでの十年余りの活動で逮捕者の数は延べ2千名を超えています[註].そしてその「逮捕」という事象は運動にとって決してネガティブではなく,メディア露出を助け,行動の「本気度」を一般市民にアピールするのに非常に役立っています.つまり,言葉だけではない,「行動による説得」です.(TPの活動家M.アームストロングは22回の逮捕と17回の拘留.インディペンデントの4月15日の記事(英文)参照)

この運動が効を奏し,イギリスでは自国の核を撤廃すべきという世論が比較多数になっています(絶対多数という調査結果もあります).また,同国唯一の核基地があるスコットランドでは,3年前から「核兵器撤去」を公約に掲げる政党が政府を握っています.

「イギリスと日本では事情が違う」と言われそうですが,確かにイギリスの反核運動と警察当局・司法当局との関係は,世界的にもかなり特殊です.私たちも3年前に,スコットランド・ファスレーン基地の封鎖行動「ファスレーン365」日本チームを作って参加しましたが,本当に「安心して」「一晩限り」の留置場を体験することが出来ました.でも,イギリスといえども決してはじめからそうだったわけではありません.長年にわたる活動家と警察との対話,そして何よりも一般市民の支持を得るための様々の工夫が積み重ねられて来た結果です.

辺野古の運動では,数年前にリーダーの平良夏芽さんが逮捕されるという事件がありました.「一人逮捕されただけでもこれだけ大変なのに,逮捕されることを煽るとはなにごとか」とも言われそうですが,逮捕者の数がある臨界点を超えると質的な転換が起きるようです.つまり警察や裁判所の側が処理能力を超えるので,逮捕を控えるようになるのです.これはスコットランドでTPが経験したことです.私たちが一晩の留置で「無罪放免」とされたのも,一部にはその効果があります.

因みに,「逮捕される」というのは,現場の警察官と,市民・活動家との間で,法解釈についての見解が違った結果に過ぎません.われわれの側には,イラクやアフガニスタンでの米軍の非人道的な違法行為を止めるという国際法上の強力な後ろ盾があるはずです.(この点では,「基地を作らせない」ためのケースよりも,より直接的な合理性,正当性を持つのかも知れません.)

本稿の副題につけた“Futenma 365”は,2007年にイギリスの核基地を撤去するための1年間を通じて基地を封鎖するキャンペーン「ファスレーン365」(Faslane 365)に因んだものです.もちろん名前というものは,現地で実際にやる人が最もアピールすると思うものを考えるでしょう.でも「ファスレーン365」を知っている人はごく少数でしょうから,この名称を「英国直輸入」と感じる人は少ないかも知れません.むしろ,もしかすると逆に,ファスレーン365の起源が「辺野古365」にあるのかも知れません.実際TPの運営メンバーでファスレーン365の提案者であるアンジー・ゼルターは2000年に沖縄に来て講演をしています.そのとき辺野古の座り込みも知ったはずです.

普天間の海兵隊に限らず,沖縄米軍の「基地被害」の最大の被害者は,海兵隊や米軍に日々家族を殺されているイラクやアフガニスタンの人々です.したがってこれらの国の人々も,この座り込み活動に参加する資格があります.もちろん加害の側のアメリカ国民もです.このような国際協力は,一国の市民運動では出し得ない巨大な力を発揮することがあります.

折から,5月16日の日曜日には,「人間の鎖・普天間基地包囲行動」が14時~15時に実施されます.その参加者の間で,この私の提案“Futenma 365”がほんの少しでも話題になると有り難いです.

私自身は当分は「逮捕回避」の形態での参加になりますが,このような運動が始まれば休暇を出来るだけたくさん使って,宜野湾市に駆けつけたいと思います.いや,もちろん他の形態であっても.

[註] 逮捕者数延べ2,251名,裁判件数520,拘留延べ日数2,197日(晩?,このうち5日はわが日本チーム),罰金総額78,024.50ポンド(罰金は実際にはほとんど払わず代わりの拘留を選ぶ).TPの活動マニュアルの日本語訳があります.反核運動だけでなく,反戦運動や市民運動に幅広く示唆をあたえる内容が盛りだくさんです.一冊千円.内容や注文先は次をご覧下さい.
 トライデント・プラウシェアズ ハンドブック

[註2] 現地での体験などを「長崎平和研究」に掲載しています.次にpdfがあります.ただし写真があるため20.5MBもあります.
「ファスレーン365」と非暴力直接行動の持つ意味
 ― 核廃絶,社会運動,さらには国防の手段として ―

  「長崎平和研究」No.27, p.125-139(2009年)
他に岩波の「世界」にも拙文あり.2008年1月号,p.278-285.
 十二名の日本市民はいかに英国の核基地を封鎖したか

日本チームの封鎖行動のビデオ(YouTube,7分強)


追記:KENKOOKINAWAさんから,次のようなツイートが返されました:
辺野古、高江は毎日座り込みが続いてます。年に1度「人間の鎖・普天間基地包囲行動」今年は5/16(日)14~15時。そして何度目の県民大会…。私には、これ以上やれとは言い切れません。 RT @yamamoto2007 「フテンマ365」http://bit.ly/aWhI9p

確かにそうでしょうね.この運動は,広い意味の「現地の人」,つまり日本市民全体がこの運動にどのくらい関わることができるか,にかかっているでしょうね.ただ,新基地阻止よりも国際行動として取り組みやすいという有利さはあります.ある日の封鎖はこんな様子でしょうか.被害国のイラクやアフガンの人々と,アメリカの市民が手を取り合ってゲートに座り込む,それを日本市民が応援する,とてもいいシーンになると思います.ちなみにファスレーン365もスコットランドだけの行動ではなく,全世界に呼びかけた行動でした.もちろんイギリスが主体でしたが.

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