2017-10

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裁判員制度の危険性 -- イギリスの陪審員法廷を「傍聴」した経験から

テレビをつけたら,NHKで裁判員制度のことをやっていた(末尾にリンク).2つのシリーズ番組のあとの方で,しかもその最後の20分程だった.裁判員制度そのものの是非も論争点になっていた.

実を言うと私は過去に,陪審員裁判を,それも一つの事件の公判の全部を傍聴した経験がある.・・・いや,正確には,「ネット傍聴」というべきかもしれない,もっと正確に,いや正直に言うと,傍聴グループの法廷メモを,翌日あるいは数日中に残らず全部読むということを経験した.この公判の被告人の応援をしていたのでその法廷報告を熱く読み,想像力も働き,直接傍聴したような気分にもなったのである.

その裁判というのは,核兵器は国際法違反であるとして,スコットランドにある核兵器関連施設をハンマーなどで破壊した3人の女性に対するものである.事件は9年前の1999年6月,公判廷はその秋のことだ*.(事件の内容と法廷の報告の翻訳,そして報道は支援要請のアピール文「『ゴイル湖の三人』公判報告」「マスコミの報道など」をごらんいただきたい.)

今から書こうとしているのはこの裁判の内容のことではなくて,裁判のやりかたについてである.裁判員制度では,公判が何と3日程度で終わるなどと言われている**.しかし,私が「傍聴」したこの裁判では,(上にも挙げた公判報告を見てもらえば分かるように),なんと18日間もかかっているのだ.つまり陪審員もこの期間まるっきり拘束されている.しかも,これは殺人や放火のような重罪事件ではない.コンピュータを海に投げ込んだり,実験機器の操作盤をハンマーで壊したりという,「器物損壊事件」として訴追されたものだ.それでもこれだけの手間と時間をかけている.それに引きかえ,裁判員制度では,被告の生死を決めるかもしれない手続きを,たったの3日で片付けようとしているのだ.これは全くとんでもないことだ.

もちろん「3日」と限定しているわけではなく,予想を言っているに過ぎないと弁解されるかも知れない.しかしこの予想日数ばかりが強調されると,いきおいそれにあわせて仕事のやりくりを決めたりするだろうから,「さっさと片付けてしまおう」という気持ちも働きかねない.人を裁くことの深刻さ,重大さに対する覚悟を求める態度とは程遠いと言うべきだろう.そのような「覚悟」を求める「広報活動」がどれほどなされているだろうか?

この他にも,先進国中では例のない,市民が市民に死刑を言い渡す制度であること,裁判全体のわずか数%の,しかも重罪事件に限定されたものであることといった,以前の記事で触れた問題点もある.

最初の番組の話にもどると,弁護士だったと思うが,裁判員制度導入に賛成の理由として,「自分たちだけではなれ合いになったり,十分に市民常識が反映しないから」と言っていた.これはほとんど自己否定に近い発言で話にならない.そんなことは自分たちが研鑽を積むことや,裁判や裁判所をもっと社会に開かれたものにすることで,いくらでも改善する方法はあるはずだ.自分たちの努力不足を理由に市民に負担を求めるなど,お粗末過ぎる議論と見た.

裁判員制度は,延期ではなく中止して,制度設計を根本的にやり直すべきだ.

* 判決は無罪でした.イギリスでは検察側は上告出来ないので,一審で無罪が確定しました.
** 最高裁の宣伝サイトには「裁判員裁判では,多くの事件は数日で終わると見込まれています」とあります.
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c2_2.html
---------

以下,該当番組へのリンクなどをお知らせします.

あなたは死刑を言い渡せますか

~ドキュメント裁判員法廷~

http://www.nhk.or.jp/special/onair/081206.html

続けての討論番組
http://www.nhk.or.jp/korekara/
---------

重要リンク
「裁判員制度はいらない! 大運動」
http://no-saiban-in.org/index.html

コメント

なるほど、18日間も・・・・まあ当然ですよね。3日の方が異常ですね。

>「さっさと片付けてしまおう」という気持ちも働きかねない

なるほど、それもありそうですね。模擬裁判ドラマを見ましたが、「出来るなら死刑を避けたい」という方向に何度も行ってしまう様子が見て取れました。まあ無理も無いことですが、そこが問題。また、多数決である事から、自分ひとりが無期を選んでも問題ない(=自分は手を挙げるのは嫌)のような感情もあるかもしれません。

無期を選んだ裁判員が、その理由を「被告の母親が気の毒」のように発言しました。確かに裁判では母親が「命だけは」と涙の訴え。これに同情したものと思われます。が、これこそ素人が関わる弊害だと思います。母親の心情を考慮するなら、どの事件の犯人も死刑に出来ません。また、すでに両親が他界していれば死刑が妥当なのかという話になってしまいます。見るべき物とそうで無いものの区別すらつかない素人の判断。本当に怖いです。

それよりも、冤罪を生みそうで怖いんですけどね。ゆきまろちゃん事件の勝木容疑者。ネット上で「現時点で、殺人容疑に関して、あなたが裁判員なら有罪か無罪か」と聞いたら、コメントをくれた全員が有罪とのこと。殺人の証拠捜査はまだこれからだという段階でです。

>弁護士だったと思うが,裁判員制度導入に賛成の理由として,「自分たちだけではなれ合いに・・・・・・お粗末過ぎる議論と見た.

そうですね。全面的に同意します。

>以前の記事

拝見しました。おっしゃる通りですね。そもそもこの制度、誰にメリットがあるのでしょうか。単に無能な人間が無意味な事を思いついた(ここまではよくあること)というだけで、実現したのでしょうか? 何か特別に、得をする人間がいるのでしょうか。

メディアと組み合わさると・・・

メディアの扇情的な扱いと組み合わさると,いわば「テレビリンチ」,「テレビ人民裁判」のようなものにもなりかねませんね.
コメントありがとうございました.本サイト(http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/)もよろしく.

 今頃、古い記事に反応して申し訳ありません。
 私は、裁判員制度も、民主主義体制下の制度なんだから、国民が真に納得していれば、少々、扇情的な裁判員によるおかしな判決が出ても、それはしょうがないのだと思っています。王様が選ぶ立派な宰相よりも、漢字が読めなくても、また税金をムダに垂れ流して使っても、自分たちが総理大臣を選ぶこと自体に意義があるのであって、それは民主主義のコストだと思います。
 しかし、現在の裁判員制度は、国民の多くが知らないうちに、「偉い人たち」によって勝手に押しつけられたものであり、そんなやり方で国民に義務を押しつけるのはとんでもないことだと思います。
 そして、その成り立ち、負い目から、いささかも国民を無理に裁判員として働かせられないという制約が働き、裁判員制度の実施が決まっている以上、冤罪が出ようが真実が発見できなくても、何としても3回で終わらせる、などというとんでもない歪みになって現れるのだと思います。
 制度ができて、抽選にあたったなら裁判員にならざるを得ない、ということではなくて、裁判員制度をぜひ作ってほしい、という声が国民の大勢になるまで、裁判員制度は実施してはならないのだと思います。
http://kentaro-0013.blog.so-net.ne.jp/2008-11-24

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