地方公聴会での「横浜ゲート」は市民運動の歴史を作った

9月16日の横浜の地方公聴会では,会場外での多くの市民による抗議行動が見られましたが,特筆すべきは市民が道路に座り込んで国会に戻ろうとする議員の車を止めたことでしょう.翌17日,いくつかの新聞はこれを写真入りで大きく,しかも好意的に報じました.
次は西日本.文中にあるように,明らかに逮捕覚悟の行動であることが分かります.
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/195620
会場前 寝そべり阻止
横浜で公聴会 もみ合い1時間
参院平和安全法制特別委員会の地方公聴会が開かれた横浜市のホテル周辺には同日午後、 安全保障関連法案に反対する市民団体などが集結した.横断幕やのぼりを掲げて 「強行採決、絶対反対」「安倍政権の暴走止めよう」などとシュプレヒコールを上げた。
約2時間40分の公聴会後、 議員が乗った黒い車が 締めくくり総括質疑が行わ れる国会に戻るためホテルを後にすると、後続の車の行く手を阻もうと、市民数十人が車道と歩道を隔てるように並ぶ警察官の壁を突破。腕を組んで次々と車道に寝そべった。
「逮捕だぞ」「歩道に戻れ」。警察官に一人一人引き抜かれるように起こされると、今度は別の市民らが車道に大勢なだれ込み議員の車を取り囲む。警察官とのもみ合いは約1時間に及び、周辺は大混乱した。
車道に寝そべった東京都目黒区の自営業男性(44)は「議員らが国会に戻れば 、法案が強行採決される。それを阻止するために行動に出た」 と主張。横浜市の会社員、海老沢三千代さん(61)は「戦争をしやすくするための法律をつくるのは許されない。平和憲法を守ってほしい」と訴えた。
(豊福幸子、宮崎拓郎)

朝日も写真入りで伝えています.ネット上の記事には,複数の写真と動画もあります.
http://www.asahi.com/articles/ASH9J6GFPH9JUTFK02B.html

英字紙では扱いが破格です.http://www.japantimes.co.jp/news/2015/09/17/national/politics-diplomacy/ruling-bloc-close-clearing-security-vote/#.Vf7DeOkxGAE
">ジャパンタイムズは1面トップに大きく写真を掲載しています.やはり直接行動に対する英字系のセンスは違います.
これらの記事はいずれネット上から消えると思うので,早めにDL,保存されることをおすすめします.
14,15日,国会前のデモの人々に配った,議員会館封鎖を呼びかける200枚のビラの最後に,国会はもうひとつの『シュワブゲート』と書きました.
http://ad9.org/pdfs/publish/blockthediet.pdf
議員会館入り口はもうひとつの「シュワブゲート」です.立法府による憲法破壊・戦争準備と,モノ(基地)によるそれ.どちらも非暴力抵抗に値します.
これは実現しませんでしたが,しかし部分的とは言え同等の行動が横浜では行われたことになります.いわば「ミニ国会封鎖」です.市民の英雄的行動という言葉で讃えたいと思います.
ふつうこのような直接行動には,大手メディアなどがバッシングをするものですが,上の記事に見られるように今回はそうではありませんでした.法案に対する幅広い市民の反発があるためでしょう.
これを,辺野古「シュワブゲート」の市民の封鎖行動にちなんで「横浜ゲート」と名付けることを提案します.そしてこれは翌日の女性議員を中心とした院内廊下での直接行動,名付けて「永田町ゲート」につながったと思います.
残念ながら,国会正門前の巨大デモを指導していた「総がかり行動」は,この潮目の変化を読めず,極度に統制・管理されたデモに始終したのは残念と言うほかはありません.
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IWJ,動画あり
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/265051
抗議者と議員の車の両方が写った写真
https://twitter.com/kmzk/status/644046703679504384
動画,「警官が抗議者を蹴る」
https://twitter.com/GlamGOBErt/status/644053574117298176
「知ってる顔がテレビで流れた」
https://twitter.com/bubu_de_la_ma/status/644060086948597760
勝利するための最低条件は?
多くの人々のかつてない努力にも関わらず,戦争法案が国会を通過してしまった.
問題は今回の運動の総括の仕方だ.最も恐ろしいのは,かつてない規模で,また多様な新しい形の運動が行われたことだけを取り上げて,まるで勝利したかのような言説で終わってしまうことだ.これでは敗走を「転進」と呼んだ旧軍部と同じだ.
プラスの面を正当に評価し,自らのエンパワーメントにつなげるのは当然だが,なぜ負けたのか,どうしたら勝て「た」のかを(あるいはもともと勝つ見込みはなかったのかを),深く,多面的に分析しなければならない.これには想像力が必要で,また骨の折れる作業だ.
最近では,教育基本法改悪に始まって秘密法まで,民主運動の敗北が重なっている(どちらもアベの「業績」).これらの敗北のあと,上のような本格的な総括が(主要な運動団体で,または影響力のある個人で)行われたとは思えない.はっきり言えば「かつてなく闘いが盛り上がった」式の粉飾決算しかなかったのではないか.これこそが民衆が敗北を続ける最大の原因ではないか.
追記:そもそも「総括」という言葉自体が死語になっているようだ.「過去のことを言っても仕方がない」式に,過去の運動から将来のための教訓やアイデアをまとめる作業をしない習慣.運動の途中では見えなかったことが広く見渡せるようになり,また記憶も鮮明な時点で,そのような作業をしておくことは死活的に重要なはずだ.「振り返り」と言い換えればいいのか,「レビュー」とカタカナにすればいいのか.
問題は今回の運動の総括の仕方だ.最も恐ろしいのは,かつてない規模で,また多様な新しい形の運動が行われたことだけを取り上げて,まるで勝利したかのような言説で終わってしまうことだ.これでは敗走を「転進」と呼んだ旧軍部と同じだ.
プラスの面を正当に評価し,自らのエンパワーメントにつなげるのは当然だが,なぜ負けたのか,どうしたら勝て「た」のかを(あるいはもともと勝つ見込みはなかったのかを),深く,多面的に分析しなければならない.これには想像力が必要で,また骨の折れる作業だ.
最近では,教育基本法改悪に始まって秘密法まで,民主運動の敗北が重なっている(どちらもアベの「業績」).これらの敗北のあと,上のような本格的な総括が(主要な運動団体で,または影響力のある個人で)行われたとは思えない.はっきり言えば「かつてなく闘いが盛り上がった」式の粉飾決算しかなかったのではないか.これこそが民衆が敗北を続ける最大の原因ではないか.
追記:そもそも「総括」という言葉自体が死語になっているようだ.「過去のことを言っても仕方がない」式に,過去の運動から将来のための教訓やアイデアをまとめる作業をしない習慣.運動の途中では見えなかったことが広く見渡せるようになり,また記憶も鮮明な時点で,そのような作業をしておくことは死活的に重要なはずだ.「振り返り」と言い換えればいいのか,「レビュー」とカタカナにすればいいのか.
「あらゆる手段」には何が含まれるのか
今週の月火,国会周辺のデモ隊に国会封鎖(=議員会館封鎖)行動の必要性を述べたビラ約200枚を配布した.また「戦争をさせない1000人委員会」の本部にも十数部届けた.
http://ad9.org/pdfs/publish/blockthediet.pdf
連絡先を書いていたが,残念ながら全く反応がなかった.また数人の現地の友人も,ムリという意見.当然予想はしていたが,やはり落胆した.
しかし,部分的とは言え同等の行動が横浜では行われた.公聴会から国会に戻ろうとする議員の乗った車を市民が座り込みで包囲し動けなくしたのだ(写真はIWJ).「ミニ国会封鎖」である.ふつうこのような直接行動には,大手メディアがバッシングをするものだが,今回はそうではなかった.そうとうな市民の支持があるということだろう.
さて,参院本会議が始まった.休憩で議員が帰宅しない限り,国会封鎖の戦術は無効になった.残されたのは,昨年3月,台湾の「ひまわり学生運動」のような市民による議場占拠だ.しかし「封鎖」が座り込み,寝転がりという純粋な非暴力で行えるのに対して,いまの国会では警察の壁を非暴力で突破するのはまず無理だ.
しかし考えてみれば,自由に国会に入れるたくさんの人がいる.衆院の野党議員だ.彼らこそ,最終段階では「超法規的憲法保障」の担い手として,抵抗権の発動の責任があるだろう.衆参の全国会議員有志による参院議場占拠・篭城である.是非とも真剣に検討してもらいたい.
台湾での学生による議場占拠は,日本では好意的に報道された.他でもない,日本自身の国家体制の擁護が目的だ.より好意的に扱われなければならないはずだ.
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関連FD投稿
https://www.facebook.com/kouichi.toyoshima/posts/726515187454233?pnref=story
台湾の議場占拠の写真はウィキペディアの「ひまわり学生運動」から
http://ad9.org/pdfs/publish/blockthediet.pdf
連絡先を書いていたが,残念ながら全く反応がなかった.また数人の現地の友人も,ムリという意見.当然予想はしていたが,やはり落胆した.

さて,参院本会議が始まった.休憩で議員が帰宅しない限り,国会封鎖の戦術は無効になった.残されたのは,昨年3月,台湾の「ひまわり学生運動」のような市民による議場占拠だ.しかし「封鎖」が座り込み,寝転がりという純粋な非暴力で行えるのに対して,いまの国会では警察の壁を非暴力で突破するのはまず無理だ.
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台湾での学生による議場占拠は,日本では好意的に報道された.他でもない,日本自身の国家体制の擁護が目的だ.より好意的に扱われなければならないはずだ.
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関連FD投稿
https://www.facebook.com/kouichi.toyoshima/posts/726515187454233?pnref=story
台湾の議場占拠の写真はウィキペディアの「ひまわり学生運動」から
地方公聴会の開催延期行動が決め手

強行採決の日程消化目的の公聴会は延期すべきです.
地方公聴会の会場のホテル入り口で「開催延期を求める」行動は容易です.物理的,地形的に.
新横浜プリンスホテル,神奈川県横浜市港北区新横浜3-4
http://www.princehotels.co.jp/shinyokohama/access/
「全勢力集結!」が呼びかけられています.
【全勢力集結!】9/16(水)戦争法案採決阻止!横浜地方公聴会緊急抗議行動開催決定!新横浜プリンスホテル前13時!
しかし「開催延期行動」であれば,12時頃から始めないと困難です.
#絶対に止める #憲法保障 #超法規的憲法保障 #抵抗権
フル・スペクトラム・レジスタンス または,ブロードバンド(広帯域)レジスタンス
フル・スペクトラム・レジスタンス

「戦争法案の強行採決を阻止するには(再掲)」の末尾に,次のように書きました.
国会周辺を数十万で埋めつくせば(交代で),議員は車では議員会館(国会)に入れなくなる.歩いて人波をかき分けて入るか,地下鉄で入るしかないでしょう.そうすれば,国民の反発がいかに大きいかを実感できるでしょう.アベが恐いか,国民が恐いか.
しかし, #国会前タハリール広場 つまり国会前の道路の継続的な占拠(オキュパイ)が実現しない場合の対策も必要です.それはやはり,強行採決必至の状況での議員会館前封鎖でしょう.SEALDsと並んで「総がかり行動」のおかげで反対運動のここまでの盛り上がりが作られて来ましたが,同時にこれらは幅広い組織なので,封鎖という「過激な」行動までは組織できないでしょう.別のグループが必要です.フル・スペクトラム・レジスタンス*,つまりあらゆる非暴力の行動形態で抵抗,阻止するという戦略です.そのような多様性を認め合うことが重要です.
大きな組織がすべて采配してくれるだろうというのは,これも一種の「お任せ民主主義」.一人ひとりが頭をフル回転させる時です.
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* Full-spectrum resistance. 米軍の傲慢極まりない標語 Full-spectrum dominance をもじりました.

数週間前に,“Journal of Resistance.Studies” という新雑誌(学界紙)の創刊号が送られて来ました.非暴力抵抗の実践的・理論的研究のジャーナルです.読み応えのある論文があります.
