戦争法案にまつわるメディア状況は詳細に記録すべき事象
私たちの親またはその上の世代はあの無謀な戦争を止めることができなかった.「なぜ止められなかったの?」と親や祖父母に問い掛けた人もいるだろう.危険が迫って来た時にはすでに言論の自由はなく,何よりも国民に事実を知る手だてもなかった.しかし今は違う.言論を理由に逮捕されることはない.大手メディアはともかく,その気になればインターネットで幅広い情報を得ることが出来る.だからもし日本が再び侵略者となることを止められなかったとしたら,あるいは国際紛争から戦争への道を遮断できなかったとすれば,現在の成人世代の責任の重さは1930〜40年代のそれとは比べものにはならないだろう.
今日の市民が戦争予防のために行動しようとするとき,ほとんどの場合,闘う相手は警察ではもちろんなく,「めんどう」とか「目立つのはいや」という,自分自身の気持ちがせいぜいだろう.
今の世代の責任は,その持ち場持ち場でさまざまだ.メディアに属する人の責任が大きいことにはだれも異論はないだろう.そのメディアの権力への屈服が多くの人に気付かれ始めている.この状況を記録することは,メディアの中で闘っている人たちを激励することにもなるだろう.
毎日新聞の最近2日間の紙面を眺めてみる.
今日の市民が戦争予防のために行動しようとするとき,ほとんどの場合,闘う相手は警察ではもちろんなく,「めんどう」とか「目立つのはいや」という,自分自身の気持ちがせいぜいだろう.
今の世代の責任は,その持ち場持ち場でさまざまだ.メディアに属する人の責任が大きいことにはだれも異論はないだろう.そのメディアの権力への屈服が多くの人に気付かれ始めている.この状況を記録することは,メディアの中で闘っている人たちを激励することにもなるだろう.
毎日新聞の最近2日間の紙面を眺めてみる.
最も重要な「世界遺産」である憲法九条

わが国の憲法九条は最も重要な「世界遺産」のはずです.遺産と言っても記念物のようなものではなく,無形のもので,世界全体がこれを模範としなければならないような,生きた遺産です.カントが「永遠平和のために」の中で常備軍の全廃を主張してすでに220年も経っているのに,大国を始め世界の多くの国がこれを実施していません.わが国は,少なくとも憲法の条文としてはこれを掲げ,外形的には常備軍に違いない自衛隊に,法律などソフトウェアで縛りをかけ,軍隊として機能しないようにして来ました.この縛りが解かれようとしています.
「世界遺産」のこのような危機の背景には,日本の九条が世界的に「孤立」させられて来たことがあると思います.第二次世界大戦の戦勝国にとって,軍隊は勝利と平和をもたらしたものとされ,肯定的にとらえられています.これを改める運動,つまり世界的な軍備撤廃の運動が弱過ぎた,とも言えると思います.軍備を当然視する世界の状況が当然日本にも拡散し,「自衛のための軍隊を持つのは当然」という,まさに「常識」的な議論が行われることになります.
前置きはこの程度にして,戦争法を食い止めるために市民レベルで可能な,しかも効果的な活動を一つ提案します.実はすでに「マスによるマスメディア」としてブログに書いていることです.個人レベルでクオリティーの高い宣伝物を周囲に配布するという,言ってみればとても平凡なアイデアです.この記事は選挙を意識して書いたのですが,一般的な政治戦でも同じです.
今日多くの国民は,テレビなど大手メディアが提供する情報を事実上鵜呑みにしていると思います.そのメディアは,安倍による用意周到な支配戦略に情けないほど屈服してしまっています.これを放置していては勝ち目はありません.
そこで,大手メディアが無視したり過小にしか扱わない重要な問題を,分かりやすく効果的に表現した文書をネットで,あるいは大量の印刷物として共有し,周囲に配るのです.ポイントは,政治的なコンテンツだけでなく,人々のメディアリテラシー向上に狙いを定め,ネット上などの良質の情報源への通路も提供することです.いくらネット上で発信しても,ほとんどの人はそれへの通路を見つけられないのです.検索エンジンやブログランキングにも仕掛けがされているでしょうし,アルバイトのネット工作員も数多くいるはずです.
夜が更けてしまったので,また続きを書きます.
NHKニュースウオッチ9は横浜での3万人憲法集会も無視
NHKテレビが沖縄県民大会を完全無視した件を,NW9の項目ごと放送時間で分析しましたところ,たくさんのアクセスと,当ブログが経験したことのない3桁のフェイスブック「いいね」をもらいました.これに勇気づけられて.もうひとつ同様の分析・計測をしました.
5月3日,憲法記念日の横浜・臨港パークでの3万人憲法集会の翌日のニュースウオッチ9です.やはりこの集会を全く取り上げませんでした.
以下,全項目の放送時間です.このような大規模政治集会を取り上げられないほど,他の重要・重大ニュースがひしめいていたのでしょうか?
テーマ 時間
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産業革命遺産 5 分 18 秒
イギリス王女誕生,名前は? 4 分 58 秒
箱根の火山活動 4 分 44 秒
ネパール地震被災 3 分 54 秒
同関連(来日バンド) 6 分 30 秒
山手線支柱倒壊問題 1 分 23 秒
国民党ー共産党会談 1 分 32 秒
子どもの人口 0 分 45 秒
中国の雑誌が太宰を取り上げ 9 分 07 秒
季節の話題ー足利市の大藤 5 分 08 秒
気象 2 分 50 秒
スポーツ 12 分 06 秒
産業革命遺産,地元の声 0 分 56 秒
———————————————————
なお,同ニュースは3.11以後全部,毎日(月〜金)録画済みです.系統的に分析されたい方はお知らせ下さい.
横浜・臨港パークを埋めつくした3万人(レイバーネットの記事から)

5月3日,憲法記念日の横浜・臨港パークでの3万人憲法集会の翌日のニュースウオッチ9です.やはりこの集会を全く取り上げませんでした.
以下,全項目の放送時間です.このような大規模政治集会を取り上げられないほど,他の重要・重大ニュースがひしめいていたのでしょうか?

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産業革命遺産 5 分 18 秒
イギリス王女誕生,名前は? 4 分 58 秒
箱根の火山活動 4 分 44 秒
ネパール地震被災 3 分 54 秒
同関連(来日バンド) 6 分 30 秒
山手線支柱倒壊問題 1 分 23 秒
国民党ー共産党会談 1 分 32 秒

中国の雑誌が太宰を取り上げ 9 分 07 秒
季節の話題ー足利市の大藤 5 分 08 秒
気象 2 分 50 秒
スポーツ 12 分 06 秒
産業革命遺産,地元の声 0 分 56 秒
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なお,同ニュースは3.11以後全部,毎日(月〜金)録画済みです.系統的に分析されたい方はお知らせ下さい.
横浜・臨港パークを埋めつくした3万人(レイバーネットの記事から)


NHKテレビが沖縄県民大会を完全無視という大ニュース

テーマ 時間
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浅田真央復帰 11 分 40 秒
殺人事件 1 分 13 秒
簡易宿泊所の火事 8 分 12 秒
住民投票,橋下会見,
維新,安倍内閣の反応 11 分 18 秒
オスプレイ墜落 1 分 50 秒
豪潜水艦開発に日本参入 3 分 14 秒
IS攻勢 5 分 4 秒
COP21 0 分 38 秒
気象 4 分 27 秒
スポーツ 11 分 12 秒
音楽 1 分 10 秒
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(エクセルファイル: http://ad9.org/blog/media/2015-5-18NW9.xlsx )
大きな事件,事象を無視するのは,誤報と同様,重大な放送倫理違反です.なぜなら,その事件は「なかった」かのような印象を視聴者に与えるからです.BPO提訴ものです.
他方,一般紙の毎日は1面トップで大きく扱っています.
また,しんぶん赤旗は,オリバー・ストーン監督のメッセージも全文掲載しています.


録画ゲリラに関する記事
録画ゲリラ作戦の提案
九条・メディアウオッチ委員会の提案
映画2題,「レオン」と「風に立つライオン」

途中からだが,ついつい最後まで見てしまった.家族を殺された少女の,殺し屋を「使って」の復讐劇である.バイオレントなシーンがこれでもかこれでもかと繰り返される.なぜ監督はこんな暴力的な映画を作ったのか,なぜ観客はそれに堪えなければならないのか.おそらく,世界の現実はこれだと言いたかったのだと思う.少女の「仇」は警察官.捜査もいい加減で,法の裁きに期待することが出来ない.恨みをはらすには復讐しかない.
テレビ報道職についての分析—その3
「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」という本の紹介の3回目です.結論部分の終章「本調査から見えてきた日本のテレビ・ジャーナリズムの課題」から.メディア問題の重要なエッセンスが込められていると思います.
ふだんインタビューする側の人たちにインタビューした研究の成果がまとめられたものです.
(前回まではこちら:1回目,2回目)
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223〜226ページ
2 テレビ報道職はジャーナリストではないのか
インタビューした限りでは、日本のテレビ報道職の人たち、特に男性のほとんどが、自分をジャーナリストとは思っていないと、答えている。では、「ジャーナリスト」とはどんな人なのか。彼らがイメージするのは、2章(1)ならびに(2)で説明されているように、「戦場ジャーナリスト」であり、その身分は「フリーランサー」であるようだ。テレピ報道職は、自分たちを「会社の名前を真ん中に書いた名刺をもって仕事をする」「組織をバックにもって仕事をしているからジャーナリストではない」という。その一方で、自分はジャーナリストではないが、自分たちのしていることはジャーナリズムであるという人もいた。
ジャーナリズムについての明確な定義や理念のないところが、ジャーナリスト教育なしでOJTに頼ったことの一つの結果とも考えられる。入社後もジャーナリズムについて系統的に学んでいないので、仕事上守るべきコンブライアンスにより目の前の仕事を遂行しても、一歩踏み込んで、言論・表現の自由や人権問題について、積極的に勝ち取る精神と方法論を学ぶ機会がなかったのではないか。
ふだんインタビューする側の人たちにインタビューした研究の成果がまとめられたものです.
(前回まではこちら:1回目,2回目)
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223〜226ページ
2 テレビ報道職はジャーナリストではないのか
インタビューした限りでは、日本のテレビ報道職の人たち、特に男性のほとんどが、自分をジャーナリストとは思っていないと、答えている。では、「ジャーナリスト」とはどんな人なのか。彼らがイメージするのは、2章(1)ならびに(2)で説明されているように、「戦場ジャーナリスト」であり、その身分は「フリーランサー」であるようだ。テレピ報道職は、自分たちを「会社の名前を真ん中に書いた名刺をもって仕事をする」「組織をバックにもって仕事をしているからジャーナリストではない」という。その一方で、自分はジャーナリストではないが、自分たちのしていることはジャーナリズムであるという人もいた。
ジャーナリズムについての明確な定義や理念のないところが、ジャーナリスト教育なしでOJTに頼ったことの一つの結果とも考えられる。入社後もジャーナリズムについて系統的に学んでいないので、仕事上守るべきコンブライアンスにより目の前の仕事を遂行しても、一歩踏み込んで、言論・表現の自由や人権問題について、積極的に勝ち取る精神と方法論を学ぶ機会がなかったのではないか。