2014-07

テレビ報道職についての分析—その2

「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」という本の紹介の2回目です.

ちょっと風変わりなジャーナリズム論で,現役のテレビ報道職へのインタビュー取材に基づいて書かれた本です.いつもは取材する側のメディア側の人たちが取材の対象となり,テレビメディアの問題点が明かにされます.

途中まで読んだところですが,とても啓発されます.マスメディアを「マスゴミ」と決めつけてくずかごに捨てるのではもちろん何も解決しないのです.

テレビ報道職の人たちによって「ジャーナリズム」という言葉がどう受容されているか,という切り口から見た一節を紹介します.組織の中で「個」が極端にネグレクトされ,その反動としてフリーランスを理想化するという思考型を観察した後に続く,「マスメディアにおけるジャーナリスト/ジャーナリズムの復権」というパラグラフ(100ページから)です.

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映画「ゴジラ」の高い思想性

godzilla1954.jpg映画「ゴジラ」のデジタルリマスター版を観た. 1954年の作品.
http://www.nhk.or.jp/bs/past/#8473

こんなに思想性の高い作品とは知らなかった.(これに続く5行はネタバレのため末尾に移動)

このような高い科学者倫理が織り込まれたのは,おそらく映画発表の4年前の,学術会議による「戦争のための科学に従わない声明」*が出されるなど,科学者倫理についての社会的関心が高かったことが背景にあるのだろう.この映画の翌年1955年には核廃絶を呼びかける「ラッセル=アインシュタイン宣言」が出される.

現在,国立大学の軍事研究拒否がひょっとするとバッシングを受けかねないような,恐ろしい状況さえ想定される.アメリカと同じ轍**を踏まないよう,大学関係者の自覚が今ほど求められる時はない.

* http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2005-11-18
** アメリカの軍産学共同の実態は次の本に詳しい.
S.W.Leslie, The Cold War and American Science - The Military-Industrial-Academic Complex at MIT and Stanford

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テレビ報道職についての重要な分析

wlunbalance.jpg「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」というタイトルの本があります.メディア問題を新しい視点で分析したもので,現在の政治状況とも深くかかわります.その中から一節を紹介します.

第1章・テレビ報道職がつくられるまで,の第2節第4項,「『まっさら』なまま職につく」の部分(2節の筆者は小室広佐子氏,太字は引用者)

テレビ報道職の生育環境は、父は専門職や大企業勤務、自営業で、経済的にも文化的にも中産以上の階層に属する家庭であり、専門的職業をもつ父からは小さいころから報道についての話を聞かされ、専業主婦の母からは女性も仕事をもつよう強く背中をおされた。出身大学は一流の4年制大学で、勉強以外の習い事もこなし教育にはお金を惜しまない家庭環境にあった。

学生時代は記者を志して大学の門をたたいた者もいれば、テレビという新しいメディアに関心のある者もいた。そして報道にもテレビにも関心のなかった者も放送局に入社した。

調査を通じて、日本のテレビ報道職は、欧米のように大学や専門機関でジャーナリズムを学び、中小の放送局で実績を積むというキャリアアップシステムとは異なる供給プロセスを経ていることが確認された。すなわち、日本の放送局は、すでに持ち備えている報道職としての専門的能力を測って採用するのではなく、専門職としては色のつかない「まっきら」な状態の学卒者を、一般教養や英語など、専門性とは別の尺度の試験を課して新人として採用するシステムをとっている。

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左派・リベラル勢力は「烏合の衆」であり続けるのか?

そうとうに偉そうな,それこそ「上から目線」的なタイトルを付けてしまったが,今国会がこの国にもたらした,そしてこれからもたらすであろう災厄の重大さ,広汎さに愕然とするばかりで,とても冷静ではいられない.それでつい筆が,いやキーが滑ってしまった.

東京新聞は,「司法 違憲判断も」と題して,今回の閣議決定について「まっとうな裁判官なら違憲判断もありうる」という憲法学者のコメントを紹介している[1].これは実際に起こりうる話だろう.なぜなら最高裁には,安倍晋三によって内閣法制局長官をクビにされた山本庸幸氏が最高裁判事に就いており,その就任会見で「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい」と発言しているからだ[2].しかし東京新聞の記事では,今回の閣議決定にもとづく関係法令が成立後は違憲訴訟を起こせる,つまりその前は起こせないとの専門家の意見を書いている.「法廷に持ち込むのは,閣議決定や関連法を整備した段階では難しく,武力行使に踏み切る段階だろう」というのだ.

しかしこの意見には全く合点が行かない.「武力行使に踏み切る段階」などと言うのではもはや手遅れで,その時点というのは実際に多くの人の命が失われることになる寸前である.裁判の日程調整などをしているうちに開戦,となったのでは何の意味もない.実際に武力行使つまり戦争が始まる前であっても,関連法が成立してしまうような時点では「手遅れ」の可能性が高い.時事ドットコムに作家・半藤一利氏のインタビュー記事[3]が載っているが,具体的な法改正までいけば「ノー・リターン・ポイント」を通過することになるだろうと述べている.つまり,そのような時点では社会の雰囲気など状況が一変しており,今でさえ稀にしか機能しない「司法の独立」はますます麻痺がひどくなっているだろう.あるいは,判決が出る頃には明文改憲そのものが追いついてしまっているかも知れない.そうすればもはや「違憲」ではなくなっている.いずれにしても「後の祭り」では司法が機能したとは言えない.「実害が出ないと法廷に持ち込めない」というこれまでの法律家の思い込みは改めて欲しいものだ.

半藤一利氏はこのインタビューの中で,「私たちは(安倍とその回りの「知恵者」に対して)油断しすぎたのかもしれない」と述べているが,全くそのとおりだと思う.秘密法,大学自治を破壊する教授会無力化法(学校教育法,国立大学法人法改正),教育委員会制度の改悪など,この国の民主勢力は大変な失点の連続である.そして今回の「集団的自衛権」=「人のけんかを買って出る権利」(半藤氏による)容認の閣議決定である.

安倍は前回首相の座についた時も(第一次安倍内閣),大変な「業績」を挙げている.憲法と並んで戦後日本民主主義の重要な財産であった教育基本法の改悪,防衛庁の省への昇格など,わが国の民主的制度の破壊と社会の軍事化では,自民党の長年の宿願を達成している.そのような内閣に対しての警戒心と対策が,これに責任を負うべき政治勢力には余りにも欠けていたと言うべきだろう.

1年前の参院選で,衆参の「ねじれ」から両院とも自公が多数を占め,いよいよ翼賛国会が加速することになったが,その直前に書いたブログ[4]で,護憲勢力側の戦略の不在を指摘した.残念ながらその時の懸念が現実化している.おそらく軍需産業もその中で大きな勢力を占めているであろう支配勢力は,用意周到な戦略・戦術を練り上げてことを進めているはずだ.それに対して民主勢力側のリーダーシップは,拙ブログ記事で指摘したように,とにかく頑張ればいい,というレベルでしかないように見える.それではプロの仕事とは言えないだろう.この点を教訓化できるかどうか,それが最大のポイントだと思う.
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[1] 「司法 違憲判断も」 専門家「従来解釈が確立」,東京新聞2014年7月2日 朝刊.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014070202000122.html
[2] 「憲法解釈で首相に“10倍返し” 最高裁判事が見せた男の意地」,日刊ゲンダイ2013年8月23日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/144145/2
[3] 目前に「引き返せぬ地点」−集団自衛権に警鐘 作家・半藤一利氏インタビュー,時事ドットコム,2014年6月26日.閣議決定後,2日の毎日にも半藤氏の「抑止力、戦争の出発点」と題するインタビュー記事がある.
http://www.jiji.com/jc/pol-interview?p=hando_kazutoshi-01
[4] 拙ブログ記事「共産党執行部は敗走を『転進』と呼んだ旧軍部に似る」
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2013-05-10

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