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2013-08

長崎の原水禁大会でオリバー・ストーンの話を聞く

(末尾に追記あり)
oliver89.jpgオリバー・ストーン監督が原水協の世界大会に出席するというニュースを聞いて,これは是非とも原水禁の方の大会にも出席してもらいたいと思い,同行予定のピーター・カズニック教授にメールを送った.好意的な返事があったので,それから関係者にメールや電話で連絡を取った.はたしてそれが功を奏したのか,あるいは別のプロセスによるものか,私には分からないが,とにかくストーン監督はこれら両集会に,しかも広島でも長崎でも何度も出席しスピーチを行った.

ひょっとしたら私の努力の「成果」かも知れない,ストーン監督の両大会出席を,この目で確かめたいと思い長崎に旅行した.ひと月ほど前にホテルを取ろうとしたが,さすがに混み合っていて,2泊のうち1泊はカプセルしか空いてなかった.

最初の,7日の原水禁の開会総会は間にあわず,終わりのほう半分ほどしか聴けなかった.ブリックホールの1階席は一杯のようだったが,2階はかなり空いていた.いずれビデオかテキストがアップロードされるのを待ちたい.8日夜のパネル討論は,開会時刻の15分ほど前に到着したが,それでも入場打ち切りの寸前だった.結局通路や演壇直下の「体育座り」(主催者の指示)まで認めて,勤労福祉会館大ホールが文字通りすし詰め状態となった.9日の原水協の閉会集会には,ストーン監督は長崎市主催の記念式典から駆けつけて,スピーチと対論とを行った.

もちろんストーン監督・カズニック教授の話の内容は,NHK-BSで放映されたシリーズの第三話にある,原爆投下が戦争とは全く無関係で,もっぱら戦後のアメリカの対ソ戦略のためであったというのが中心である.そして,原爆によって戦争終結が早められたとか,何万もの米兵・日本人の命を救ったというような神話が,戦後のアメリカの核支配体制の正当化のベースになっており,このウソを暴くことがアメリカ帝国の世界支配から人々を解放することにつながる,という主張である.

また,日本の歴史教育についても警告を発している.ドイツでは戦争を徹底的に反省し,歴史を次世代に教育しているが,日本の若者は日本がアジア・太平洋を侵略し残虐行為を行った歴史をほとんど知らない.9日の原水協の閉会集会では,ここに集まった皆さんがそのような現状を変える先頭に立って欲しい,というようなことを言っていた.また,このセッションの後半,若者と被爆二世との対論のシーンで選挙で投票に行くことの重要性に触れ,名前こそ出さなかったが社民党の福島党首の風貌や肩書きを述べて,「自分だったらSocialist Party に投票したでしょう」と言った.さすがにこの瞬間の拍手はまばらだったが,通訳はこの部分を大幅に省略し,「社会主義者の政党(socialist's party)に投票したでしょう」と訳した.はたして監督は「配慮」と受け取るだろうか,いや,おそらく不満に違いない.

DSC_4942t+cap.jpg原水禁・原水協の双方に共通することだが,これらの集会への個人の参加者はほとんど想定されていない.どちらの集会のホームページにも参加費の情報が出ていない(実際は相当高額なのに).原水禁の日程表には,ところどころに「有料」の記載と金額があるので,それ以外は無料と思ってしまうが,実際は違う.また参加受付も,原水協は各県の本部に事前に申し込まなければならないし,原水禁は当日でもよいが,その登録は,最初のイベントである「開会総会」の会場から2.5キロも離れたところで済ませなければならない.(このため駅からタクシーで「ツアー」をせざるを得なかった.)どちらも「団体登録」受付けとなっており,個人はあくまで例外なのだ.原水禁の受付けでは「所属団体」を聞かれた.つまり,双方の集会とも,それぞれの組織の「年次総会」なのだ.

それより何より,同じ目的の集会が同じ場所・日程で並行して行われながら,互いに他を完全に無視している,というのが異常だ.それぞれの参加者はその中に閉じこもっている.相互に交流・連絡があれば,ストーン監督の日程ももっと余裕が持てたのではないか.だいいち,両方の集会に出るには参加費が嵩み過ぎる.

両組織の間の分裂の歴史は知っているが,それを相互無視の理由にできる期限はとっくに切れている.

(おまけ) 7日の原水禁開会総会のあと,トイレで耳に挟んだ会話:「今年は核禁会議と別で,とても良い内容だった.あんなの(核禁会議)まやかしだよ」.
こういう情報は現場に行かないと得られない.

(追記)原水協閉会総会での安井事務局長の「行動提起」には,予想通りの失望を味あわされた.けっきょくは「署名運動」だけで,それ以外の行動メニューは何もない(もともと「署名」は「ことば」であり厳密には行動とも言えないが).原水協は長年この活動を続けてきたが,それが現実を動かし成果が見えたというのならまだしも,平和運動は全体としては見るべき「結果」を出すどころか,自衛隊の海外派兵や沖縄へのオスプレイ配備など,後退の一方である.そして最近見られる,日本社会全体の極右化にまで行き着いた.

原水協の大会に毎年参加しているイギリスのCNDなどヨーロッパの運動は,非暴力直接行動などもっと積極的な活動で成果を挙げている.

長崎市民会館の体育館を埋め尽くした大勢の人々は,かれの「提起」に満足して帰路についたのだろうか?もしそうなら,敢えて言いたいが,いくら多人数でもそれは烏合の衆に過ぎない.原水禁大会に参加したことのあるスコットランドの女性教授の,「あの人たちはとても保守的だ」という言葉を思い出す.

このように,同じことの繰り返しで「結果を出す」ことに無関心な態度をゆるすのに影響を与えているのが「継続は力」とか「続けることが大事」という言葉の曲解であろう.「力」であり「大事」なことかも知れないが,それだけではダメなのだ.この当たり前のことをもっと反芻する必要がある.
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原水協でのスピーチのうち2つはYouTubeにあります.
映像分科会(原水協)
https://www.youtube.com/watch?v=kjInXm_p5Ok&feature=player_embedded
閉会集会(原水協)
http://www.youtube.com/watch?v=PxLD935et-I

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はたして、911 は本当にテロだったのか。ZERO は、原版(イタリア語)の制作(2007年)以来、ローマ国際映画祭(2007年10月)、ブリュッセルEU議会場(2008年 2月)、ロシア国営放送(2008年9月)で上映された、対テロ戦争の原点を鋭くえぐる長編ドキュメンタリー。

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