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2012-03

マイナーな雑誌に文章を出しました

日本科学者会議の月刊誌「日本の科学者」の4月号に,「『御用学者』批判ができない大学社会」と題する7ページの論文を発表しました.3月15日に発売されています.冒頭の「要約」とエピグラフ,小見出しを紹介します.御用学者批判と,国立大学「法人化」の問題が主な内容です.発行は「本の泉社」です.
(要約)
「原発安全神話」をめぐって,これに専門家として荷担した人たちが「御用学者」と呼ばれ,責任が問われている.同時に,新しく流布され始めた「放射線安全神話」はこれから多数の人びとの健康と生命に直接関わるため,緊急に問題とされるべきである.現代社会は専門家による独裁の危険が常にあり,これを防止するには,分野をまたぐ活発な相互批判と,高い水準の「学問の自由」が求められる.

(エピグラフ)
「各文化はそれに属する人々に,地域固有の暴政を振るう.しかし,あらゆる文化の中で自由な精神が手を組み,その暴政に反逆する.それが科学なのだ.」(フリーマン・ダイソン『反逆としての科学』みすず書房)

小見出し
はじめに ― 「御用学者」とは誰か
1 新たな「安全神話」と御用学者
2 「科学僧官」宣言?
3 「安全神話」問題からの一つの教訓
4 なぜ批判がないのか―劣化する相互批判の環境
5 国立大学の「法人化」と大学自治
6 「法人化」に無抵抗だった国立大学
7 知識人論,大学論の不在
おわりに― ラディカリズムの再生を
DSC_2409t.jpg
この号には,仙台赤十字病院第2呼吸器内科部長,岡山博氏の「放射線被曝問題と発言の仕方」という文章も掲載されています.その中には長崎大学の山下俊一氏への公然たる批判もあります.山下批判が同業者の発言として出てきた意義は大きいと思います.

東大の安冨歩という人の「原発危機と東大話法」という本を半分ほど読みました.実に痛快な大学人批判,東大批判です.私の小文も大学(自己)批判という点では共通しますが,安冨氏の文章の面白さ,辛辣さにはかないません.

ガレキ焼却に関するNHKニュースはメディア・リテラシーの格好の教材

MLでのガレキ問題でのやり取りで,静岡県島田市がガレキ焼却の試験をしたというNHKのニュース原稿を教えてもらった.これが非常に不思議な記事だ.いや,むしろ事実の歪曲と隠蔽の見本のようなもので,「メディア・リテラシー」の格好の教材になりそうだ.全文を引用する.
島田市 がれき焼却問題なしと確認(3月12日)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120312/k10013670141000.html
 →リンク切れのため「魚拓」へ
東日本大震災の被災地のがれきについて、静岡県島田市は、試験焼却の結果、排ガスなどについても放射性物質の濃度に問題はないと確認できたとして、15日にも、がれきの本格的な受け入れを正式に表明する方針です。
被災地のがれきを受け入れるため、静岡県島田市は放射性物質への住民の不安を取り除こうと、先月、市内のごみ処理施設で岩手県山田町の木材のがれき10トンを一般のごみに混ぜて試験的に焼却しました。
検査機関による測定でがれきや焼却灰の放射線量などは、一般ごみだけを焼却した場合と変わらないことがすでに確認されていましたが、このほかのデータもまとまり、12日、市の担当者が議会側に報告しました。
それによりますと、排ガスについては集じん器の入り口で1立方メートル当たり最大0.70ベクレルと、ごく僅かに放射性セシウムが検出されたものの、フィルターを通ったあとの煙突の部分では検出されませんでした
また、焼却灰とは別に出るスラグやメタルと呼ばれる残留物からは放射性物質は検出されず、市の担当者は「全体として問題のある数値は出ていない」と説明しました。
報告を受けた島田市議会の中野浩二議長は「東北を助けなければという思いはほとんどの議員が同じなので、市は測定を続けて地元の理解を得てほしい」と述べました。
島田市の桜井勝郎市長は15日にも、がれきの本格的な受け入れを正式に表明する方針です。

なにがおかしいか?
1.排ガス中の濃度
集じん器の入り口での排ガス中放射性セシウム濃度0.7 Bq/m^3 を「ごくわずか」という.これは例えば群馬県高崎市のCTBT観測所の現在の大気中濃度 10^-4 Bq/m^3(これも事故前に比べて非常に高いが)に比べて1万倍近い.フィルターのあとでは検出されなかったとあるが,「不検出」は検出限界値を示さないと意味がない.かりにフィルターで99%除去され,1%にまで低減されるとしても 0.007 Bq/m^3.煙突から出ることになるこの濃度は,事故直後の昨年3月末から4月初めにかけての上記高崎市の値,言い換えるとこの頃の関東平野での値に匹敵する.事故前の平常値は10^-7Bq/m^3程度である.

2.焼却灰中の濃度
このニュース文では肝心の焼却灰についての値を示していない.一般ゴミと変わらないことが「すでに確認されていた」とあるが,排ガスで検出されて灰が一般ゴミのレベルとはとうてい考えられない.この点について,原典,つまり静岡県のサイトに当たってみると,次のように消却灰の値が出ている.
http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-040/gareki/1-7.html

(5)焼却灰等の放射性セシウム濃度測定結果
 採取日:平成24年2月17日(金曜日)
 (単位)Bq/kg
 -------------------------------------
 測定対象物   放射性セシウム濃度
 無害化処理灰  64
 -------------------------------------

確かに原子力発電所の事業所内から出た廃棄物の規制値である100Bq/kgといういわゆる「クリアランスレベル」に比べれば小さいが,しかしNHKは「一般ごみだけを焼却した場合と変わらない」と言っているのである.フクシマ以前はもちろん,現在でも,九州など福島からはなれた所での一般ゴミの焼却灰にこんなにセシウムが入っているとは到底思えない.NHKは一体どこの「一般ゴミ」のことを言っているのだろうか?
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強まる「放射能分かち合い」プロパガンダ

昨日の「Pネット」学習会は,藤田祐幸氏による原発問題の1時間半を超える講演だった.そして話題の中心は今まさにホットな「がれき問題」.被災地復興が進まないのは受け入れが進まないからだとか,「痛みを分かち合う」だとか,メディアの言うことがまさにプロパガンダそのものと言うことがよく分かるプレゼンテーションだった.メディアは一人も取材に来ていなかったが,全くもったいない.こんなことなら,私もアドレスの分かる記者などに知らせておくのだったと思う.

最も印象的かつ説得力あるスライドは次だ.これは,環境省の「東北地方及び関東地方における一般家庭等で使用される 薪及び薪の灰等の調査結果について」という2月24日の報道発表を,藤田氏がグラフ化したものだ*.これはがれきのデータではないが,大いに参考になる数値だろう.(クリックで拡大)
fujita-tn1.gif
従来,原子力発電所の事業所内から出た廃棄物の規制値として100ベクレル/kgという数値があったが,東日本大震災後,原発でもない一般廃棄物の値として,この80倍の8,000ベクレル/kgに引き上げてしまったのだが,その数値のからくりも見えてくる.縦軸で8,000のところに横に線を引くと,大半が「基準内」に収まるのだ.被ばく量を「年間1ミリ」から勝手に5ミリだの20ミリに引き上げたのと同じご都合主義,国民の健康を顧みないご都合主義の繰り返しである.
(* 対数目盛になっている左縦軸で8,000ベクレル/kgの横線は引用者が追加)

この8,000ベクレル/kgへの引き上げについては,徳島県のホームページが,「情け無い君たち東京を見習え」という投稿への毅然とした反論の中で,手厳しく批判している.

「目安箱に寄せられた提言と回答」
http://www.pref.tokushima.jp/governor/opinion/form/652

注:左縦軸で“8,000”の目盛りの打ち方:
1,000の目盛りと10,000の目盛りの間隔を物差しで測り,その0.9倍(より正確には log8 = 0.903...倍)の長さを,1,000の目盛りの位置から上に取る.

必要性も理由も調べずに「震災がれき受け入れ」決議

昨日(12日),北九州市議会が「震災がれき受け入れ決議」を全会一致で行ったというニュースが流れました.全国的にも同様の傾向が広がるようで,重大です.

この件でなにより問題なのは,「広域処理」を決めた環境省の「災害廃棄物安全評価検討委員会」の議事録が秘密にされており,「広域処理」の理由が全く不明だということです.「環境行政改革フォーラム」というサイトがこの問題を系統的に追及しています.例えば昨年11月17日の記事「開示されない『災害廃棄物安全評価検討委員会』の会議録音データ」です.
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col105.htm

地元で処理するのが良いのか,わざわざ遠くまで運ぶ必要があるのか,そもそも,その議論が公開されないのでは,検討にすら値しないと言うべきでしょう.つまり自治体などは,まず議事録の公開を要求すべきです.是非の議論はそれからです.

上記「環境行政改革フォーラム」の記事も引用している「ICRP勧告111」には,次のように透明性の原則を謳っています.

・・・ ここでいう透明性とは,重要な情報はすべて関係者に提供されること,及び情報に基づく決定を目的として意思決定プロセスを追跡できるように記録を適切に文書に残すことを前提としている.
(ICRP勧告翻訳検討委員会による日本語版ドラフト http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,html

(この文章の場所は次のとおり:
3章「汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会の体系の適用
 3.2 「防護対策の最適化」の節
  33項の末尾)
ICRP 勧告 111のタイトルは「原子力事故または放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」ですが,長期汚染地域以外の人々は別だ(秘密でよい),などと言うことはあり得ません.

メディアはガレキの山の映像を繰り返して,「協力」を連呼するだけで,正確な分析をしていないのではないでしょうか.

ファシスト跋扈に対する沈黙の罪

最近のマスメディアの橋下徹の持ち上げぶりからすると,この国の支配勢力はこの男を次の政治的支配の「アイコン」に決定したと見て間違いないだろう.もちろん単なるアイコンとしてではなく,「すぐれた」才能を備えた扇動家・政治屋としてである.小泉純一郎に騙されてまだそれほど時間も経っていないのに,またまた国民は騙されるのだろうか.

橋下のファシストぶりは件の市職員思想調査だけでも明白だ.問題は,一連の橋下の乱脈と暴政に対する,多くの「良識ある」はずの人々の沈黙だ.マーチン・ルーサー・キング牧師の言葉を引用しよう.
究極的に悪いのは悪人の残忍さではなく,良識ある人々の沈黙である.
"The ultimate tragedy is not the brutality of the bad people, but the silence of the good people." -- Martin Luther King
この点について,「世に倦む日日」の2月27日の記事から共感を持って引用しよう.(ただし,私自身で次の人々の「沈黙」を確認したわけではない.)

http://critic5.exblog.jp/17876522/
・・・数万人のフォロワーを抱える著名人たちが、眼前のファシズムの怒濤の潮流に対して抵抗や警鐘の論陣を全く張っていない事実である。江川紹子とか、湯浅誠とか、堤未果とか、鳥越俊太郎とか、マスコミでも活躍して影響力のある者たちが、この異常な空気に抗して割り込む行動をしていない。言論で収入を得ている者たちが、言葉を発せず黙って見ている。

そこで,「沈黙の責任」を問うプロジェクトを提案したい.このようなファシストの跋扈に対しては当然警告を発すべき「良識ある」人々がその責任を果たしているか,点検をするのである.著名言論人を対象として,以下のような点検表を作ってはどうか?

氏名   市職員思想調査への態度  教育基本条例案への態度
×山△郎  反対          意見表明なし
○田☆子  意見表明なし      意見表明なし
・ ・・・

発言していることを報告するのは易しいが,「発言していない」ことを確かめるのは簡単ではない.しかしネット上で分業が出来れば可能かも知れない.

当ブログ関連記事:「『起立』する人の責任」
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2005-04-22-1
(これは著名人ではなく,一般人の責任を問うたものです.)

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はたして、911 は本当にテロだったのか。ZERO は、原版(イタリア語)の制作(2007年)以来、ローマ国際映画祭(2007年10月)、ブリュッセルEU議会場(2008年 2月)、ロシア国営放送(2008年9月)で上映された、対テロ戦争の原点を鋭くえぐる長編ドキュメンタリー。

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