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2010-07

「固定資産税」の税率が固定されているのはおかしい ― 片山善博氏の講演

片山善博氏の講演会の案内が来ていたので,覗いてみることにした.佐賀県保険医協会の主催.片山氏は何かのテレビ番組にレギュラー出演しているのをチラッと見たことがあるので,テレビに出るような人の話だからどうせ大したことはないだろうと,ほとんど期待していなかった.しかし実際にはとても示唆に富む話が聴けた.

これまで,民主党による政権交代後も含め,「地域主権」の名の下に,自治体首長の権限拡大ばかり言われているとして,まずこれを批判することから本論が始まった.要するに,性懲りもなくまたオリンピック招致や,400億円もあらたにドブに捨てるに等しい都立銀行救済に使うような,石原都知事の権限を強化したら一体どうなるかという,至極分かりやすい例題で説明した.首長の権限ではなく,住民の権限こそ拡大すべきだ,というのが氏の主張だ.

そこで住民の権限拡大だが,まず住民投票を頻繁に用いる,ないし制度化することを主張.彼は,これが頻繁に行われている米カリフォルニア州の例を挙げた.これは特に目新しい話ではないし,わが国でも市民運動家はあちこちで実践していることだが,片山氏のような政治的ポジションの人(「左翼右翼」の軸ではたぶん保守系か?)が発言することには多いに意味があると思う.

私が大いに啓発されたのは,税金,つまり地方税の話だ.「固定資産税」の税率が評価額の1.4%に固定されているが,これがおかしいというのだ.そもそもこれは変動制でなければおかしいという.まず名前からして,オーストラリアではこの税金と税率のことを “rate” と言うそうだ.これには「変動」のニュアンスが込められている.どういうことかというと,自治体が新しい事業なり施設なりを作ろうとすると,当然お金,つまり余分な税金が必要になる.それに応じて,つまりその費用を調達するために税率を変える,そのことを住民に,議会に諮る,というのである.

わが国ではこれが固定されていることが,オーストラリア人やアメリカ人には不思議がられるという.「固定資産」税ではなくて,「固定」資産税,という(自虐的)ジョークで返すしかないと・・・.

一般的な税金の上げ下げの議論としてではなく,自治体が行う個別の事業が直接自分の払う税金に直結するとなると,住民の関心もレベルが違ってくる.まさにそのとおりだろう.このような固定資産税の税率,“rate” を通じての住民からのフィードバックは,自治を住民に取り戻すカギだと,片山氏は主張するが,そのとおりと思う.

(以下は筆者のコメント)
しかし,自治体の規模が大きいと,個別の事業が税率に反映する係数は非常に小さくなるだろう.たとえば学校の校舎を新設するか,修繕ですませるか,という選択肢の場合は,この「反映係数」はパーセント程度の桁ではなく,“ppm”のオーダーになるかも知れない.常勤職員の給料など,固定的な部分も大きい.他の事業の増減との関係でさらに「変動」が均され,税率を変えることの手間の方が大きい,ということになるのかも知れない.この点で,地方自治に関しては,市町村合併で「大きな政府」を作ってしまったことのデメリットは大きいだろう.

しかしダムや新幹線,空港などの巨大プロジェクトでは,「反映係数」は可視的な桁になるだろう.これらのしばしばムダと指摘されるプロジェクトを止められないことにわれわれ住民は無力感を感じるが,住民投票制度と併せて,この税金を本当に“rate”に変えることによって,住民がエンパワーされていくことが大いに期待出来る.そしてムダ公共事業が本当に止められる仕組みが出来るだろう.

ホテルの大きなホールは満員だったが,少なくとも私も含め聴衆はかなりエンパワーされたのではないか.質疑応答も活発だった.

追記:鳥取県知事時代の全国知事会での,片山氏が取ったひとつの姿勢には大いに共感した.何かの案件で,議長はどうしても「全会一致」の体裁を取りたがる.しかし賛成もしていないのにそれを曲げるわけにはいかないとして,しばしば多数決を要求したことがあるという.可決されることは初めから分かっていても,である.そして実際,「反対1」(一回だけ反対2)で可決される.会議終了後,ある知事が,「実は私も反対だったんです」と言ってきたこともあるという.

実は私も所属の教授会で同じ経験をしている.私一人が反対意見を言っている状況.やはり議長(学部長)は全会一致にこだわるが,私はしばしば採決を求めた.そしてやはり「反対1」で可決される.でも反対(つまり私に賛成)が2ではなく数票になったこともある.

豪紙 “The Australian” が日本からインドへの原子力技術輸出問題を取り上げる

少し前にオーストラリアの新聞“The Australian”から電話があり,日本が,NPT非加盟国であるインドに原子力技術を輸出しようとしているが,どう思うか,と聞いてきた.この問題についての,政府への要望書の署名者の欄を見て,とのことだった.

関連ニュース「日本が核不拡散条約非加盟のインドへの原子力技術の輸出を急ぐ」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100702-00000007-scn-int

私の回答が7月15日の同紙の記事の中に,数十行にわたって掲載された.記事全文が無料のウェブ版で読める.
Anxiety mushrooms* over Japanese nuclear exports

電話インタビューの内容はよく反映されていた.特に,小見出しに私の次の言葉が採用されていたのには大いに満足した.

「たとえどのような経済的メリットがあるとしても,核戦争のリスクと較べることはできない.」
"It would be a big plus to the economy. But no matter how much it does for our economy, we just cannot compare it to the risk of a nuclear war."

all-small-t.jpg
* mushrooms は mushroom clouds,つまり原爆のキノコ雲のこと.不安の暗“雲”に原爆のイメージを重ねています.

1401577.gif追記:NTI(The Nuclear Threat Initiative)という団体のジャーナル“Global Security Newswire”がこの記事を要約して掲載しています.
Japan's Atomic Trade Ambitions Prompt Concerns

「劣情」の動員か? ・・・「みんなの党」の異常な支持率について

大津留公彦ブログによると,東京選挙区は消費税増税派ばかりで占められる危険があるという.同ブログによる日経新聞の引用では,「東京選挙区の五人目の議席を,共産党の小池晃氏と,みんなの党の松田公太氏とで争っている」そうだ.
http://ootsuru.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-4398.html

みんなの党のHPを見るといろいろ書いてあるが,「官民人材交流センターを時限的に廃止」というのが目についた.これは,渡辺喜美氏が行革担当大臣のとき作った制度ではなかったか.これに対する総括ないし自己批判はどこにあるのだろうか?少なくとも同党のサイトで検索する限り,総括は出てこない.

それから「国家公務員10万人削減」というのもある.現在31万人らしいから,3分の1も減らすのだ.また公務員給与やボーナスの2~3割の大幅カットも.気になるのは,これを喝采する人々がいるということだ.公務員の数や給料が減ればそれが自分の懐に回ってくるとでも思っているのだろうか?むしろ,大量の失業者の発生とも相まって,少なくとも直接的には,よりいっそうの民間賃金の低下と雇用不安につながりかねない.つまり「民間」のクビを締めることになるのだが,その想像力は働かないのだろうか.

全く使われなくなった言葉に「劣情」というのがある.性的感情や興奮のことを官憲が見下して使った言葉のようだ.どうやらこれが再利用されるべき時が来たようだ.みんなの党はテレビでも,この解雇した十万人の公務員はハローワークへ行けばいいとまで言ってのけたようだ.このような言辞までも喝采する人がいるとすればそれは,他人の不幸を喜ぶという,まさに「劣情」そのものだろう.その一方で,億を超える高額報酬の企業経営者に対する批判はほとんど聞かれない.身近な,攻撃しやすい集団を攻撃する,これまた「劣情」だ.

みんなの党にたいする詳しい批判が,上で紹介した大津留公彦ブログにあるので,ぜひご覧いただきたい.アドレスを再掲する.
http://ootsuru.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-4398.html

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はたして、911 は本当にテロだったのか。ZERO は、原版(イタリア語)の制作(2007年)以来、ローマ国際映画祭(2007年10月)、ブリュッセルEU議会場(2008年 2月)、ロシア国営放送(2008年9月)で上映された、対テロ戦争の原点を鋭くえぐる長編ドキュメンタリー。

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