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2008-12

裁判員制度の危険性 -- イギリスの陪審員法廷を「傍聴」した経験から

テレビをつけたら,NHKで裁判員制度のことをやっていた(末尾にリンク).2つのシリーズ番組のあとの方で,しかもその最後の20分程だった.裁判員制度そのものの是非も論争点になっていた.

実を言うと私は過去に,陪審員裁判を,それも一つの事件の公判の全部を傍聴した経験がある.・・・いや,正確には,「ネット傍聴」というべきかもしれない,もっと正確に,いや正直に言うと,傍聴グループの法廷メモを,翌日あるいは数日中に残らず全部読むということを経験した.この公判の被告人の応援をしていたのでその法廷報告を熱く読み,想像力も働き,直接傍聴したような気分にもなったのである.

その裁判というのは,核兵器は国際法違反であるとして,スコットランドにある核兵器関連施設をハンマーなどで破壊した3人の女性に対するものである.事件は9年前の1999年6月,公判廷はその秋のことだ*.(事件の内容と法廷の報告の翻訳,そして報道は支援要請のアピール文「『ゴイル湖の三人』公判報告」「マスコミの報道など」をごらんいただきたい.)

今から書こうとしているのはこの裁判の内容のことではなくて,裁判のやりかたについてである.裁判員制度では,公判が何と3日程度で終わるなどと言われている**.しかし,私が「傍聴」したこの裁判では,(上にも挙げた公判報告を見てもらえば分かるように),なんと18日間もかかっているのだ.つまり陪審員もこの期間まるっきり拘束されている.しかも,これは殺人や放火のような重罪事件ではない.コンピュータを海に投げ込んだり,実験機器の操作盤をハンマーで壊したりという,「器物損壊事件」として訴追されたものだ.それでもこれだけの手間と時間をかけている.それに引きかえ,裁判員制度では,被告の生死を決めるかもしれない手続きを,たったの3日で片付けようとしているのだ.これは全くとんでもないことだ.

もちろん「3日」と限定しているわけではなく,予想を言っているに過ぎないと弁解されるかも知れない.しかしこの予想日数ばかりが強調されると,いきおいそれにあわせて仕事のやりくりを決めたりするだろうから,「さっさと片付けてしまおう」という気持ちも働きかねない.人を裁くことの深刻さ,重大さに対する覚悟を求める態度とは程遠いと言うべきだろう.そのような「覚悟」を求める「広報活動」がどれほどなされているだろうか?

この他にも,先進国中では例のない,市民が市民に死刑を言い渡す制度であること,裁判全体のわずか数%の,しかも重罪事件に限定されたものであることといった,以前の記事で触れた問題点もある.

最初の番組の話にもどると,弁護士だったと思うが,裁判員制度導入に賛成の理由として,「自分たちだけではなれ合いになったり,十分に市民常識が反映しないから」と言っていた.これはほとんど自己否定に近い発言で話にならない.そんなことは自分たちが研鑽を積むことや,裁判や裁判所をもっと社会に開かれたものにすることで,いくらでも改善する方法はあるはずだ.自分たちの努力不足を理由に市民に負担を求めるなど,お粗末過ぎる議論と見た.

裁判員制度は,延期ではなく中止して,制度設計を根本的にやり直すべきだ.

* 判決は無罪でした.イギリスでは検察側は上告出来ないので,一審で無罪が確定しました.
** 最高裁の宣伝サイトには「裁判員裁判では,多くの事件は数日で終わると見込まれています」とあります.
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c2_2.html
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以下,該当番組へのリンクなどをお知らせします.

あなたは死刑を言い渡せますか

~ドキュメント裁判員法廷~

http://www.nhk.or.jp/special/onair/081206.html

続けての討論番組
http://www.nhk.or.jp/korekara/
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重要リンク
「裁判員制度はいらない! 大運動」
http://no-saiban-in.org/index.html

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はたして、911 は本当にテロだったのか。ZERO は、原版(イタリア語)の制作(2007年)以来、ローマ国際映画祭(2007年10月)、ブリュッセルEU議会場(2008年 2月)、ロシア国営放送(2008年9月)で上映された、対テロ戦争の原点を鋭くえぐる長編ドキュメンタリー。

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